入所1週間で
国際M&A案件に参画
ハーバード留学で国際
感覚が磨かれた

パートナー

奥田 洋平(63期)

2007年東京大学法学部卒。2009年東京大学法科大学院修了。2019年ハーバード・ロースクールLL.M.課程修了。M&Aや大型紛争を二本柱として様々な案件に関与し、最近は、三本目の柱としてエンタメ分野や薬事分野にも積極的に取り組んでいる。モットーにしている言葉は、「即興」。音楽鑑賞やスポーツ観戦、飲み屋めぐりが趣味である。

入所1週間で、国際M&A案件に
デューデリから契約書締結まで
一連の業務を経験

ー2010年にY&Pに入所後、2018年~2019年にハーバード・ロースクールに留学した1年間を除き、ずっとY&Pに在籍されています。

入所してから10数年ですか、光陰矢の如しではないですが、あっという間のように思います。今でもよく覚えているのは、入所して1週間くらい経ったところで、国際的なM&A案件を担当したことです。右も左も分からない状態でしたが、先輩弁護士から指導を受けながら、インタビューを含めた法務デュー・ディリジェンスから最終契約書の締結まで携わりました。弁護士になって間もないうちに、M&Aの実務全体に携わるという強烈な経験でした。 また、この案件では、対象会社が中国子会社を複数保有していましたので、中国現地法律事務所と協働する必要があり、英語での電子メールのやり取りも行うことになりました。OJTで本当に鍛えられました。

奥田 洋平

ー新人時代から国際M&A案件にも関わっていたんですね。入所後、国内案件と国際案件の割合はどのくらいでしたか?

国内案件と国際案件という切り口で考えたことは余りないというのが正直なところです。案件の中で海外とのやり取りが発生するものを国際案件というとすると、お話しした新人時代の国際M&A案件以来、国際案件を担当していない期間というのはありません。日々何らかの案件で海外とのやり取りは発生していて、それは今も変わりません。

ー法分野という意味では、どのような案件を主として担当されていたのでしょうか?

特に若手の時代は、分野を問わず何でもやらせてもらいました。その中で、M&A、独禁法の案件は比較的多かったように思いますが、訴訟・争訟、エンタメ、ファイナンス、倒産・事業再生、不正調査、本当に幅広く担当していました。

また、案件の全体を担当できることは、自分の成長にとって大きなプラスになったように思います。例えば、M&A案件であれば、法務デュー・ディリジェンスや契約書のレビューといった業務だけではなく、財務局対応も行いますし、独禁法の届出も行うため、M&Aに関わるあらゆる法分野を取り扱うことになります。

若手時代の印象深い案件のひとつに、とあるM&A案件があるのですが、クライアントが独禁法の届出が必要となることを認識されていなかったことがあり、手続の必要性を指摘した上で、届出から公取委との協議を含めてY&Pにて対応した、ということがありました。頼まれていないことを含めて受け身ではなく、主体的にアドバイスすることができ、クライアントからも非常に感謝されたので、とても印象に残っています。

奥田 洋平

卒業テーマは米国における
芸能事務所に対する法規制
ハーバードで過ごした濃い時間

ーそのような中で2018年にハーバード・ロースクールに留学することになりました。

若手弁護士とも話をしていると、最近は、英語は留学しなくてもできるようになるし、留学期間がブランクになってしまうので、留学が必須ではないといった考え方もあるようです。しかし、留学は単に英語や海外の法制を勉強する機会ではありません。世界的な学者との交流はもちろんですが、他の国・地域からの留学生との交流・ネットワークや、異文化での経験などは、日本で弁護士をしているだけでは絶対に得られない財産です。留学を検討されている方には、ぜひ行ってほしいと思っています。

奥田 洋平

ー留学先を決めた経緯について教えてください。

Y&Pとハーバード・ロースクールとの関係があった点もありますが、東海岸の雰囲気が漠然といいなと思っていたことと、ボストンであれば4大スポーツ(NFL、NBA、MLB、NHL)も揃っていて治安もいいですし、色々な経験が得られそうだと思いました。

渡米早々に、連邦最高裁判所判事に指名されたBrett Kavanaughのスキャンダルがあり、判事就任に反対する抗議デモが行われていたのが印象に残っています。日本でも最高裁判事候補に同様のスキャンダルが発覚したら、どうなるのだろうと想像したりしていました。

これもまたボストン生活が始まって早々の出来事なのですが、ハーバード・ロースクールには、David Wilkins教授というLegal Professionの世界的な権威がいます。同教授は雲の上にいるような世界的な研究者なのですが、私と同時期に留学していた日本人学生が、たまたま同教授にY&Pからの留学生がいると伝えたそうで、それがきっかけでWilkins教授からお招きいただき話をする機会がありました。同教授は、Y&Pのファウンダーが長年にわたって非常に懇意にしている方でもあり、留学中にも色々と気にかけていただきました。ほかにもファウンダーと旧知の間柄の先生方がハーバードには多くおいでで、ハーバード・ロースクールの教授陣がY&Pからの留学生に寄せる期待を知って、渡米早々背筋が伸びる思いをしました。

ー留学を通じて得られたことを教えてください。

事務所からは大いに学び、大いに遊べと言われて送り出されたのですが、学ぶことすべてが面白く、結構真面目に勉強していました。教授陣、授業、施設等の全ての面で勉強に集中できる環境があり、日本のロースクールと比べても贅沢な環境だなと思いましたね。

ハーバード・ロースクールでは留学生も卒業レポートの作成が必要となります。私は、米国における芸能事務所に対する法規制を題材としたのですが、作成時期は図書館にこもることも多く、集中的に一つのテーマに取り組んだという経験も貴重でした。また、韓国出身で、アジア系女性として初めてハーバード・ロースクールの教授となったJeannie Suk Gersen先生にレポートを読んでいただいたことも、非常によい思い出です。

奥田 洋平

仕事は実技。手を動かさなければ
成長することはない

ー留学前後を問わず、国際案件の割合は多いとのことでしたが、国際案件の面白みというのはどのような点にありますか?

国際案件に限らず、仕事はどれも面白いと思って取り組んでいます。国際案件という点で改めて考えてみると、海外の一流法律事務所に所属する弁護士と協働できるのは魅力ですよね。欧米の一流といわれる弁護士のやり方を見て、自分の業務に活かせる部分が必ずあるからです。知らずば人真似ではないですが、他の弁護士の仕事ぶりを見る機会があるのは貴重です。

欧米以外の地域の弁護士と案件を一緒に進める機会も多いですが、東アジア、東南アジア、中央アジア、中東、南米などなど、法制、慣習それぞれに特徴があって、弁護士の仕事ぶりも地域に応じてそれなりの特徴のようなものがあります。国際案件を担当していると、そうしたある種の国際感覚の勘所を身につけることができ、そのような感覚がクライアントとの意思疎通で役立った機会は少なくないですね。 また、様々な地域の案件を取り扱うことで、地域横断的な知見を深めることもできます。例えば、世界的に代理店・販売店を保護する法規制を設けている地域が少なくありません。もちろん細かな違いはありますが、類似する部分も多く、更にいえば、いわゆる継続的契約の法理に通じる部分もあるため、特定の分野について、地域横断的な知見、日本法との異同を踏まえた検討など、幅広い視点を得ることができます。

奥田 洋平

ーなるほど、国際感覚ですか。奥田先生は海外旅行もお好きですよね。それも国際感覚を身につけるためということでしょうか?

抽象的な話になってしまうのですが、国際感覚は案件を進める上でも大切なものだと思っています。 そのためだけというわけではないですが、旅行の時間は意識的に設けるようにしています。欧米はもちろんですが、中国、東南アジア、中南米も旅行した経験があります。個人的に好きなのは、現地の市場や小売店を巡ることで、日系企業の商品が本国の商品とどう違うか、それがどのように陳列されているか、といった点に着目して各所を巡ることが面白いですね。Y&Pにも、小売事業やマーケティングDXに取り組むクライアントが多くいらっしゃるので、そのような肌で触れて培った感覚が案件処理に役立つ場合も多いです。

ー若手弁護士と案件を共にする場合に留意していることはありますか。

若手弁護士によく伝えていることは、仕事は実技だということです。つまり、自分でやることと、他人の仕事をレビューする、論評することとの間には天と地の差があって、自分で手を動かさなければ成長することはないという点です。ある意味、スポーツ選手や演奏家に近いだろうと思っています。 実は、私のモットーは「即興」なのですが、新人時代からひたすら手を動かしてきて様々な「型」を知り、経験値を重ねてきたからこそ柔軟に動けるのだと思います。 したがって、どんな案件であっても、できる限り新人、若手に手を動かしてもらう、それをこちらがレビューする、修正の趣旨や理由を説明する、ということを心がけています。私も、ひたすら手を動かし、OJTで鍛えられて今がありますので、こういった機会を新人、若手には大事にしてもらいたいと思っています。

ー具体的な指導方法や指導内容として心がけていることはありますか。

コロナ禍の時期は、メールやチャットでやり取りせざるを得ない時期がありましたが、メールでは伝えられることに限りがあるため、私個人としては、できる限り、口頭でのディスカッションを心がけています。Y&Pでは、いつでもそこかしこで内部の打合せ、簡単な口頭のディスカッションが行われていますが、こういったディスカッションの中で、新人や若手からいいアイデアが出てくることもありますし、先輩に物怖じしないで対等な立場で自ら考える姿勢、習慣というものもついてくると思います。

Y&Pでは、業務分野、業界、国内国際など、様々な案件を幅広く取り扱うことができ、しかも、新人時代から主体的に案件に関与することができます。その分、大変なこともあるかもしれませんが、弁護士としての成長にとってこれ以上ない環境にあると思います。